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翌朝はラッキーにも暗いうちに目が覚めた。そそくさと半分凍ったおにぎりを詰め込み、ヘッドライトの灯の中トレースを辿る。どうやらいい天気な様だ。まだ眠気も覚めないうちに一ノ倉出合に到着。
一ノ倉沢に目をやればテールリッジに見事な、てん、てん、てん、、、っとヘッドライトの灯が見える。たくさんの、、、いくつだろうか? ずいぶんと賑やかである。 こんな一ノ倉も久々に見るような気がするのである。それも既にずいぶんと上の方に見えるのである。いったい何時に出発したのであろうか? |
ナンパーティーだろうか?まぁみんながみんな、ヤツに向か
う事もないだろう、、、っと 勝手に決め込んで希望をいだきつつ、、、しかし他に狙っていそうなものもあるわけではないのは良く知っている。まぁ”病は気から”っというから、気だけは落とさない様にしないとネ! とにかくずいぶん先行されている。これでは追い抜くのはもちろん、追い付くのさえ無理なように思えた。まぁ、仕方がない。こういうこともあるさ!おかげさんで残されたしっかりしたトレースをツボ足で辿ることにする。こりゃぁ?ずいぶんと楽をさせてもらっているな。昨日は無かったデブリを越え一ノ沢を過ぎ、衝立沢側からあっという間にテールリッジに這い上がる。 |
明るくなってきた一ノ倉は白く美しい。二ノ沢が落ちそうである。本谷は気配はないが、、滝沢のデルタは余り発達していない。中央稜のテラスに到着するとなんとか先行に追い付いたようだ。...ということはラッセルはかなり厳しかったということ。知らないならそのまま追い抜くことも出来るかも知れないが、、、僕は、、、、? チト酸素が、、、、薄くなってきそうである。 一息着いてここでハーネスを付け、最後の身支度を整える。不要なものはデポだ。そしてここから取り付きまでの烏帽子スラブのトラバースは相変わらず良くはない。
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取り付きに行くと先行は4パーティーと判る。先頭と次のパーティーは時間節約
のため合体して4人でフォローユマーリングに切り替えた様だ。これはビッケの
僕らにとってもありがたいことである。僕らはというとやはり一つ前、3パー
ティー目と合体し登ることにした。少しでも時間を節約したい。 |
取り付きから見るヤツは見慣れた光景とは少し違い、一応氷になっている。しかしすぐそこいら辺は非常に薄く、氷のつきにくい岩と相まっていい感じはしない。南稜方面には大きなツララ。いつもよりは幾分か大きい。しかしあれは登れるのだろうか。かなりアアクロバアチックで”アホウ!”のクラアイミングは出来るに違いない。確かに興味は尽きない。大氷柱はというと、どうしてあそこまでだけは立派に発達するのだろう。その下はいつもよりはイイとしても、どう見ても貧弱である。水が消えちゃうのかな?
先行4人のユマーリングには気をもむほどの時間が掛かっている。無造作に置くアイゼンで、残り少ない氷がいとも簡単に落ちていく。”うわ!”残しておいてくれぃ!! |
この持て余す時間もすこぶる体調の悪い僕には具合のいい休憩時間ではあるが、既に陽が高くなりつつある。ここだけ切り取れば人気のアイスクライミングルートの取り付きの順番待ちの和やかな日向ぼっこである。ところがこの場合、氷の状態はきっとみるみる悪くなっているのであろう。なかなか気が気ではない。本谷が落ちた。
1ピッチ目は変形チムニールートとおぼしき辺り、氷を求めてクライミングとなる。氷といってもジャレにしかならないいいわけ程度の破片であり、落とさないように登るのは結構大変だ。ランニングにはかなり難しい。良く捜せばきっと何処かにピンがあるはずであるが、なかなか見当たらない。こんなに岩が出ているのに不思議である。バンドに這い上がる手前でピッチを切ったようだ。先行のユマーリングのロープと、僕の前に同じロープにつながったヒロケンと、その足とアイゼンが入り乱れる訳の判らない状態になった。とりあえずヒロケンの足が僕の頭のすぐ上にあり、氷が欠けたり少しばかりズッコケたりして落ちて来ようものなら顔面にアイゼンを食らうことだろう。落氷??という物ではなく氷は落ちてきた。無造作にアックスを打ち込めばヒロケンに当たる。なぁんじゃこりゃ??ただでさえ無い氷なのに、、、なんとも惨状だ。 |
2ピッチ目は変形チムニーまでのバンドに這い上がる。ほとんど氷はない。いやたぶん、今朝はあった感じがするが、今は、、、、落ちた。
ここもヒロケン攻撃は酷く、上手く間隔が取れないので悲惨だった。 |
ここいらで先行は核心に入っていったと思われる。落氷が頻繁にあり、丁度酷い具合に僕らを目掛けて落ちてきた。
大きなバンドだが、余り居心地は良くない。
たくさんあるはずのピンも見当たらない。先行パーティーは同志会直上のスラブに点々と打たれているボルトを支点にしている。おそらくもっと変形チムニー寄りにもピンはたくさんあるはずである。 |
3ピッチ目は核心の第一弾、同志会直上のスラブをやや左気味から薄い氷をたど
る。陽もずいぶん高くなり辺りからは水が流れ始めている。そう、いつもの見慣
れた様子になりつつあるのである。氷は極端に強度がなくなり、岩は良く滑る。
なんとかトップは上に抜けたようだが、上にはスペースに余裕がないのかなかな
かお呼びが掛からない。まだ氷があるうちに早く登ってしまいたいのに。。。
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余りに暇なので、準ちゃんが打ったはずの、、同志会直上から下ろすためのボルトを捜し始める。たしか三角っぽい感じの場所にあった気がするんだが、、、、結構見付からない。諦め半分で捜していると、雪と岩の隙間にスリングが見え、ビレイ中の鈴木さんに”その辺にアックッス刺してみて!!”っとお願いして場所を確認し、、、見事に支点を発見したのである。これで敗退してもここからはおそらく60メートル目一杯の懸垂一回で、どぉ〜んと下まで下りられるだろう。かなり気楽になった。 ドームの向こうに陽も隠れ、壁も日陰になる。かといって一旦流れ始めた水流はすぐさま止まるわけでもない。 |
さらに延々待たされた後にやっとこお声がかかった。残った氷を辿りジグザグに行ける場所を上にあがる。フォローなので気楽に登れるが、、既にリードは不可能だと思われる。氷ではなく、、良く知ったあの、、シャーベットというのでしょうか、、、そう言う感じの雪みたいなんが良く滑る岩の上に乗っているという見慣れた光景になってしまった。ランニング?おそらくスクリューはこの感じじゃぁ効かない。残置ピンは、確か出だしにあって、このスラブには無かったかな?っと記憶してる。バンドに上がれば残置があるはずだが、バンドは雪だらけである。 |
やっとこバンドに這い上がり、ここも絶妙に居心地が悪い。
ここまで来れば視界が開け、上の核心は見えてきた。左により貧弱なビレイポイント。ここに先行パーティーも含めてごちゃごちゃと固まっている。ボルトが1本と、あとは何かあるみたいだ。 次のピッチは切れている。その上には立派な氷があるように思えるのだが、何故か?その下にはいきなり貧弱なものになっており、つながってはいない。オマケに招かざるクライマーとその後の刺客により、登路は無残な姿になっている。あつ、またひとつ無くなった。確かに僕は背が高い。そしてかなり無茶であり、、、通常取るランナーは少ない。でもなぁ、、、コレは、、どうかなぁ、、、進路はッズタアッズタアになっていて、すでに少なくともアイスクラアイミングの領域では無くなってしまっている。まぁカッコ良く言えば、ミックッスなのかなぁ??? |
今なら先行パーティの最後のロープが目の前にある。ヒロケンはどうにも上に行きたいらしく、最後の方に無理やりお願いしてロープを1本ユマーリングしながら引っ張っていって貰うことにした。そして、じゃぁ〜ん。なんとユマールとおぼしきがでてきた。とにかく上にいくという。”長島さん、どうします?” どうします?ったってさぁ、、ユマールは持ってないし、タイブロックは1コ持ってはいるが、凍った9ミリには上手く効かないだろうから、これじゃ大変だしな。ヒロケンが上に行ったらビレイしてくれるから、とにかく無茶でもナンでもクライミングすればいいわけだが、ううむ。悲惨なくらいあまりに氷が無いなぁ。登れるんかいな??? 仕方がないか。どだいフォローばっかでは登りきっても面白くはない。きっとまた来ることになるだろう。ここは見物だけと割りきって、今日のところはここから下ってしまうことにしよう。またくればいいさ。 ばたばたとユマーリングしているヒロケンと分かれ、僕らはここから懸垂を始めるのであった。 |
取り付きに戻るとシュルンドは少し広がっている。荷物も埋まっている。烏帽子スラブを下り、中央稜のテラスへ。ここで不要になると思われるヒロケンの装備も下ろしてしまう、ツエルトとコンロは置いておいたほうがいいな。丁度腐り始めのテールリッジを下り、暗くなり始めた。コップからも雪崩れが落ちたらしい。デブリが出ている。出合に戻ったころ、同下降しているヘッドライト軍団が確認できる。待っていても仕方がないのでとぼとぼとトレースを辿り、帰り始めよう。 また来ようかな。 |
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