2007年12月24日
       八ケ岳東面 天狗沢左俣



    前日入りした割りには遅い出足なのである。それというのも昨晩は結構盛り上がり、遅くというか、、早く迄というか、、とにかく飲んでいた。だから美し森に到着した頃合いには、僕の周囲はまだ酒臭いのである。


    空は快晴。やっちゃった感がただただ漂う。


    本日は久々に”山”である。ここントコいわゆる”山”からは縁遠くなっている。事に冬山となると、トンと御無沙汰なのである。フリークライミングとやらに甘んじており、そっちの方も、、、昨年は成果も進歩もあんまり見られない。まぁ要するに駄目なのである。
    今回はヒロケンのお誘いの元、なんでも”まさか??”っという八ケ岳の東面。この登り尽くされている感の強いエリアに、これまた”まさか!?”っの未登の氷があるというのである。”そんなのたぶん無いだろう。。。”っと思いながらも、リハビリがてら参加させていただくことにした。
    お昼も回り特に暑い日である。お決まりの林道歩きから始まり、少し様子を見ながら歩き始めてみる。
    ”こんなに林道は長かったっけかな?”

    久々の歩き。林道を歩くことすらシンドク感じる。ううむ、ヤバイな。

    ここから3時間弱。林道を終え地獄谷へと通じるトレースをとぼとぼ辿り、、”酒くせぇ〜な”
    一汗かいて酒が抜けた時分にはうっすらと日が陰りだし、丁度其のころ出合の小屋に到着した。

    少し休むとまるでアル中のように酒を摂取するのであった。
    翌日もなかなかの天気である。昨晩からいろいろとコースに悩んだ。狙いは天狗沢左俣なのだが、地獄谷は長くラッセルがはげしいからである。記憶によるととにかく雪まみれだった感じがする。ううむ、あんまり気が乗らない。
    ツルムを一旦登り上から沢の状態を観察し、途中から頃合いを見計らってトラバースして、地獄谷に降りる。ただコレはツルムから地獄谷への急な斜面を下らなくてはいけない。その代わり沢の状況を眺めることが出来るのはありがたい。そして帰りは主稜線とキレットを経て、ツルムの下降になる。これが結構長くなる。最悪の事態では、ツルムへの登り返しということも充分に考えられる。
    または旭東稜を登ってしまい下山ついでにツルムからトラバースする。これはもっと行程が長くなり、やっぱり下降は同じことになる。
    天狗尾根を登ってしまい下降して取り付くというのも考えられるが、とりあえずトレース無しの様子であり、、、そうすると結構なラッセルが予想される。その代わり下降は天狗尾根を自分達のトレースを使って早く下れるだろう。
    散々話しても結論は出ぬまま朝を迎え、そして結局結論は一番ローテクな感じのする”地獄谷からのアプローチ”となったのである。

    ツルムからのトレースを左に分け、早速のラッセル。降ったばかりでしかも結構深い。
    地獄谷の悪い滝をほとんどドライ、、で泥に汚れながら越えると、ほんの少しで天狗沢の出合となった。
    天狗沢に入っても状況は変わらない。相変わらずのラッセル。まるでラッセル訓練の様相である。
    間違って足を流水の中に踏み抜かないように注意しながら、、いつ終わるともないラッセルは続いていくのである。すぐに右俣を分け、左俣へ。

    出合の傾斜の緩い滝は完璧に雪没していて、氷とは程遠い。
    沢筋は結構曲がっていて、行く先を見通すことは出来そうにない。果たして氷はあるのだろうか?
    厄介な、、、そして長い倒木帯を歩いて行く。この辺りは結構傾斜があるのだが、、、氷は、、、見当たらない。ラッセルの状況は変わらない。
    これは無いな。なんとなくそういう空気が漂う。
    沢は比較的明るいが、荒い感じのする沢である。
    まぁ久しぶりだし、ラッセル訓練だ。

    半分諦めているが、、、まぁまだ時間も有り、沢も続いている。
    ついでだから、、もうちょっといってみるかぁ。。。
    ”旭東稜からは天狗沢左俣に氷が見えたんですけどねぇ〜”

    まぁ、遠目に見たときには傾斜はわからないし、雪壁が光の反射などでたまたま氷のように見えたのかも知れない。いや、おそらくこれだけの場所だから、沢筋でない場所に、、、ちょっと入った枝沢とかに人知れず大きなつららや氷があっても全くおかしくはない。
    倒木帯もずいぶんと落ち着き、ラッセルはますます深くなってきた。ゴルジュ帯とおぼしきをを通過し、2段の滝とか、、20メートルの滝とおぼしき場所を通過する。どうやら無積雪期は、、おそらく綺麗な滝なのであろう。。。しかし、、、積雪期ともなると、いかんせん傾斜が無さ過ぎるのか、、、積雪が多すぎるのか、、、いや、、やっぱり傾斜がなさすぎるのである。滝とおぼしき箇所は単なる急なラッセルになってしまっているのである。
    しばらくして見覚えのある岩塔が遠くに見えてきてしまった。ううむ、、、まだまだ高度さはあるものの、ゴールが見えてしまった感がある。あれは恐らく大天狗であろう。そして沢はまだまだ、、っという感じもしないでもないが、、、ダケエカンバが見かけられるようになり、、、ほうら、、いつ開けてしまってもおかしくないくらいに源頭とおぼしくなりつつある。このまま大天狗の下の急な斜面に出てしまうのかも知れない。。。まぁ、その確率も大きくなってきた。既にどんなに強がりを言って頑張ってみたところで、70%は諦めモードになってきた。
    だめだろうなぁ、、、コレは。。。

    今回は無駄足。
    いや、久しぶりの山。それも一応本格的な冬山である事だし、体力造り、、いや、、コンディション試し、、、、いや、、自分を悟りにというほうがイイな。とにかくそうしてやってきたんだ。だからコレでイイのである。今の僕は贅沢言える状態ではない。
    正直、、あまりに久々の山。恥ずかしながら”いけるのかなぁ?”とか、”歩けるかなぁ???”っとか、”寒くないかなぁ”という情けない不安がたくさんあり、そしてとっても大きく僕の脳裏によぎっていた。たとえ勝手知ったる慣れた場所、、、たかだか八ケ岳であっても、山は不十分な者には容赦はないことは良く理解している。最悪の状況では、、、一人敗退し、出合の小屋で”お留守番”になるかもしれないし、もっと悲惨な状況になるかも知れないという感じも、、、というのも覚悟していた。少なくともそういう自分で自分自身に印篭を渡すというか、、見切るというか、、、、”諦める”感覚が鈍っていなければ、、まぁ今後の展開では、再び山とのお付き合いも出来る希望が見いだせなくもない。
    そうは言っても、
    なかなか無茶は出来るものでもない。死にたくはないからね。今回こうして幸運にも厳しい冬山に戻ってこられたのは、、やっぱりヒロケンだったからにちがいない。色々な場所に一緒に行かせていただき、、楽しい思いもしてる。やり残しているのもいくつかある。まぁ、馬鹿ではないので死ぬほどの無茶はしないし。。。そこが僕とは違うのか???同じなのか??
    いや、僕が同じになってしまったのかなぁ、、、、ううむ。。

    しぶとく山に通っていて、現状の状況の判断は、、、結構無茶だけど無理ではない。。思わず”苦笑い”がでてしまうという感じだ。僕は、、っというと、”死にそこなわないと真のクライミングにならない”というのが信条である。あのビリビリ来る限界の感じが”クライミング”の最大の醍醐味だ。だいたい結構人間というのは死なないものである。しかしやっぱり怖いものは怖いのである。だから出来ない。でも行きたい。そして”突っ込む”事に覚悟を決めて、、、そうして”やめとけばよかったな”っとか思いながら、、、”いや!行ける”っと突っ込み、、、自己との葛藤が起こり、絶妙なバランスで自然と調和して突破していく感じが一番感じ入る物があり、、、、あれが快感なのである。だから”山”なんだろうな。
    そして、、今回の同行はヒロケン。知識や経験は僕の比ではない。たぶん僕のこともそこそこ理解していて、どんな状態にあるのかとか、、そういうのも感じ取れるだろう。信頼が出来る、、、人間である。任せた奴が”馬鹿”と思うが、、、まぁそれでもイイかぁ〜
    ”15時で諦めましょうかぁ”
    既に6時間。氷のかけらもない。さすがにヒロケンも今回は”スカ”っと感じたらしい。”まぁ永年気になっていた場所がスカだと解っただけでイイ”っともらしていた。

    そうだな。僕のコンディションも思ったほど悪くはない。とりあえず稜線に出るか、、見渡せてしまって、、、、もうあの大天狗下の急な雪壁以外何も無いというのが見渡せるか、、、オーバータイムか。とにかくしっかりした”諦め”の理由がつくまで行ってみよう、、、と

    とにかく、いけるトコまで入ってみよう。とにかく限界まで行ってみよう。そう思い、右に左に曲がりながら、ただ続くラッセルの沢筋を進んでいく。
                        
         
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