歩いていくのであった
海の色は顕著に汚くなっていく。”うわぁぁぁ!” たまらないねぇ、この現実。信じられないくらいに汚い。
臭いも気になってくるよ。
見覚えのある海ほたるを右手に見る。前後には同じくらいの距離を保ちながら、一列になって船が進んでいく。
”あの船は この船より大きいのかなぁ?”
”大きい、大きい。この船よりずぅ〜っと大きいさ!”
ここから眺めると そんなに大きくは見えないのだが、どうやら大きいらしい。左手の横浜、川崎方面には巨大なタンカーが泊まっている。これは明らかにデカイ。
”あれは 空荷だな”
どうやら 船の横のあの”赤いライン”を見れば、船の積み荷がどういう状態なのかが解るらしい。
再び少しだけ広くなった湾内を共勝丸は進む。
もう すぐそこまで、戻ってきた。お世辞にも見慣れた景色ではない。でも あの向こうには住み慣れた町があり、、社会とやらがある。いいのか悪いのか?良くはわからない。でも 東京は近いのである。これは現実だ。
共勝丸はスピードを落としながら列に並んで湾内に入っていく。大海原では なぁんにも起こらないで、勝手奔放に進んでいればよかったが、ここではそういうわけにはいかないのである。ちゃんと決まりがあるらしい。
右手には千葉のコンビナート。左は横浜、川崎。大きな船は左側に多い。どうやら 横浜、川崎の方が 海が深いらしい。
飛行機が飛んでいくのが見えてきた。もう羽田も近い。しかし物凄い密集である。ここには母島の数万倍の人間が暮らしている。工場があり、産業がある。凄いなぁ。
大都会、モンスター、、そういう言葉がぴったりくる。
レインボーブリッジをくぐり ぐっと海は狭くなってくる。船はおが丸の到着する”竹芝桟橋”を左手にやり過ごし、ますます狭くなった海を進む。そして こんな”ちっぽけ”な入江に入っていく。”こんなに狭いところに入るのかいな?”
ビルディングや倉庫に囲まれた入り江が、共勝丸が目指す”東京”らしい。
接岸した。今日は入江には他の船が無いから楽らしい。酷いときには数隻の船が係留してあり、それを縫うように接岸するという。
目の前には月島警察だ。”警察署の前にバス停があるから、そこからバスに乗っていけば東京駅に出るよ!”
あとの事はさすがに知っている。そう、ここはもう僕が慣れている場所ナンだね。だから いちいち説明は要らない。ナンとかなるに違いない。共勝丸の上や母島では 僕には解らない事、知らない事、理解できないことが一杯ある。それが逆に面白く、刺激的で興味をそそるのである。でもその興味は 慣れていってしまうと消えていってしまう。その代わり、気を使わないで生活することが出来るようになる。やっぱり人間はなれた環境で生活するのが一番楽なんだ。
てきぱきとロープで固定される。慣れたモンである。当然 接岸を告げるアナウンスもない。例のハシゴを使って 勝手に降りるだけである。なんか 名残惜しいね。振返れば あっという間の出来事だったな。もう少しここに居たかった様な気がする。そうすれば もっと馴染めたかも? でも、共勝丸に住み着くわけにもいかないし、、、普通ではなかったが居心地は良かった。
そして久しぶりの陸地だな。
余りの長旅だからだろうか? あまり例の”ふぅらふぅらした感覚”は無い。麻痺してるのかな? ”ああ、着いたんだな” しっくりと そう感じる。
”どうもお世話になりました。”
そう言うと 僕は大きな重い荷物を引きづりながら、バス停を目指して歩いていくのであった。
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