小笠原最高峰
久しぶりに乳房山の山頂を越えて帰ってみようと思う。
僕らがボッカしているハイキング道路は 乳房山の山頂に通じている。毎日毎日山道を歩いてボッカしていると、もう歩くのはやめたいなぁ、、、っと だんだん面倒になってくる。
ボッカはなるべく上の方から進めていて、徐々に下の方の荷物へととりかかっていっている。そのほうがだんだん楽になってくるので、疲れてきた身体としては 気分的に楽になってくるからである。疲れてきて なおかつ遠くに運ばなくてはいけなくなってくると気が滅入ってくる。ボッカが進んでだんだん下の方の荷物を運ぶようになってくると、ボッカのペースは上がってくるのだ。そのほうが気分がいい。ボッカが進んで段々近くなってくるころにはある程度余裕も出てくるのだが、山頂に行くのは益々面倒なことになって おっくうになってしまうから。今のうちに一度くらいは登っておいたほうがいい。そう思ったので 今日辺りぐるっと回ってみようかな。ボッカの最高地点のハチマキから先の木道はずいぶん整備されて奇麗になっている。時折はみ出してくる枝が邪魔臭いトコがあるが、全くこの島の植物達の成長の早さはびっくりさせられるものである。その逆に全く成長しないような植物もあるから、これまた不思議である。
”何故だろう?”
ノボタンの箇所も それと気が付かないくらいに綺麗に整備されてしまっている。あんまり歩きやすくなると、歩き易い分 時間がかからなくなる。早く歩いてしまうから ノボタンやらメグロやらにも目が向かなくなってしまうような気もするし、歩き易い分足下に注意しなくていいから周囲が良く見られるようになるという気もする。一体どっちなんだろうか?
どちらにしても なかなか訪れるチャンスがない小笠原であるから、何をやるにしても 出来るだけ時間をかけてゆっくりしたほうがいい。そうしないと 見逃してしまうことが多くなってしまう。 何度も何度も歩いているボッカ道だけど、毎日毎日少しずつ発見することが出てくるモンである。ゆっくり歩けばその分だけ、確実に経験できるものは増えていくに違いない。足早に歩いてしまったら メグロたちもびっくりして逃げていってしまう。万一興味をもってくれていても 追い付いて来ることが出来ない。だから ゆっくり時間をかけてみよう。たとえ昼寝をするんだって、ゆっくりしたほうがいい。その方が母島を満喫できるよ。
乳房山は母島の最高峰だ。海抜が463メートル。父島列島の父島、婿島、、にはこれより高い山はないから、父島・母島列島の最高峰、つまりは小笠原最高峰ということになっている。観光協会では “あること”をして来ると認定番号と名前の入った”登頂証明書”を発行してくれるから あらかじめ観光協会に行って受け付けてもらうといい。そうすると“あること”をするための登頂キットが貰える。(材料費¥300) そうすれば物的おみやげの少ない母島での貴重な思い出になるだろう。
僕の登頂証明書は2枚あるんだ。実際にはもっとたくさん登ってるけどね。
一枚目は2002年3月1日。番号は695だった。そして2枚目は2004年2月2日。こっちの番号は1813。だから2年ほどで1100枚も発行されていることになるね。
無駄に上ってももったいない。乳房山に登るのなら、まず観光協会に行って手続きをしたほうがいい。早めに行ったほうがいいよ、観光協会は 昼休みや留守の時があるからね。
乳房山は母島の最高峰だ。ところが実際には小笠原村の南の方、火山列島の南硫黄島には916メートルという海抜の山があり、これが真の小笠原最高峰である。真の小笠原最高峰と言われれば、興味が湧いてくる。ちょっと南硫黄について調べてみよう。
島には住人が居た記録はなく、つまり今までずっと無人島であったため、貴重な手付かずの自然が残っている。そういうことになっているが、実際にはどうなっていると調べた記録はどこにもなく、未知である。資料は極端に少なく謎が多い。島自体はは成層火山であるが過去1万年の間、噴火した形跡はないというから、恐竜がすんでいるかも?と思えるくらいに妙なものが住んでいるのかも知れない。ジェラシックパークなのかも?? 島の周囲は荒波に侵食されており、地形図によれば谷川岳一ノ倉沢の岩壁帯に匹敵する急な断壁になっている。砂浜もない。そのままの傾斜で標高差400〜600メートル一気に立ちはだかっているようだ。海の近くの壁は大きく見える。海金剛でいつもそう感じていた。おそらくこの壁は絶望的に大きく急に見えるに違いない。島の上半分は比較的傾斜が緩やかに成っており、島全体はプリンのような台形になっているのかな? 山頂部、島の上の方はガスに包まれていることが多く、なかなか姿を見ることは出来ないという。乳房山の稜線ですらガスが発生しやすいので なんとなく理解が出来る。大洋の真ん中にいきなり急な斜面が現れると、一気に持ち上げられた湿った空気はすぐに冷やされ、簡単にガスを発生するのである。
どうやら 南硫黄の島の感じは、ドライアイスを乗っけたプリンみたいな感じなのだろう。
”おいしそうだな!”
南硫黄島は島全体が天然記念物に指定されており、上陸が許可されていない。学術調査ですら許可が出されたことはないらしい。テレビも入ったことはない。だからそこを訪れることは不可能なのは残念だ。たとえ”誰も見ていないから行ってみよう!”と船を出したとしても、硫黄島には自衛隊の基地があるのですぐに見付かってしまうので追い返されてしまうらしい。
それでは南硫黄島には人間は上陸したことが無いのかというと、調べてみるとそういうことでもないらしい。明治には函館沖で遭難した船が漂着し3人が上陸し 3年後に発見されている記録がある。なんで南に流れてくるのか良く解らんが、そういうことになっている。また、南硫黄島では戦闘は行なわれなかったが、硫黄島陥落後に米軍兵が上陸したところ1名の日本兵が発見されている。つまり 偶然漂着した人間は数名いたようだ。まだ発見されていない人もいるのかもしれないな。島には砂浜や波止場はないので直接船を着けることは出来ない。ところが手段は解らないが米軍は調査のため意図的に上陸したことになる。この島に上陸するにはヘリコプターを使うしかないという。それ以外は、発見された人達がそうであったように偶然漂着する。それしかない。不思議なのは偶然漂着した人間が、一ノ倉沢の岩壁帯に匹敵する急な断壁を登っているのだろうか?という事。地形図ほど厳しい壁ではないのかも知れないな。いやそれとも、ほんの限られた場所で生き延びていたのだろうか?水は在るのかな? いくらナンでも南稜テラスや中央稜のテラス、いやテールリッジまで全部いれても、3年は暮らせないだろう。どうやって生きていたのだろう。ううむ、どんな所なのだろう?是非見てみたいなぁ。
実際のところ、グアムやサイパンから日本に向けて、カヌーやヨットで向かうというアドベンチャーをやっている人は年間数人居るようである。そういった経験者は、ひょっとしたら南硫黄島の姿を近くで見ているかも知れない。そうだな、カヌーに乗って日本に向かい、無理やり漂着すれば南硫黄島に上陸できるかも知れない。ただ、おそらくその後は再び発見されて戻ってこられるかどうかは解らないな。おっと だんだん思考回路がアドベンチャーからサバイバルになってきたな。
とりあえず乳房山の山頂に辿り着いた。乳房山の山頂から元地に向けては整備された道を下っていく。前回までの整備工事で綺麗にした箇所である。乳房山のハイキング道路の入り口は、集落のある元地の奥、ガソリンスタンドの方にある。ハイキング道路はここからぐるっと一週回ってこられるようになっている。ボッカに使っている乳房新道は、集落からは大剣先山の向こう側から登ってきて、途中、反時計回りのルートの真ん中くらいにひょんと飛びだしてくる。観光協会では時計回りに回るのがお勧め。コースタイムは4時間とかそのくらいだと思う。ただ、登ってしまえばいいという手合のものでもなく、是非ゆっくり味わってみたい。何せ歩くのが一番、いや、本当は止まって寝て居るのが一番母島を感じることが出来るから。そこで僕的には逆回りの方がいいような感じがしている。登りは長くキツくなるのだが、その分下りは楽になる。キツイ登りは 長い階段がひたすらに続く。ゆっくり時間をかけて休み休み行けばよいじゃぁないか。そのほうが いろんなものが見えてくる、味わえる。ゆっくり味わうのなら登りで4〜5時間くらいかけよう。滞在時間が短いから なかなかこんなにもゆっくりできないのが一般的で残念だな。母島には乳房山以外にも見たいもの、訪れたい場所はいくつもあるから どうしても急いでしまう。しかしここを本当に味わおうとしたら長ければ長いほうがいい。
登り始めて大剣先との分岐に来れば、大剣先にピストンしてみたい。それからは傾斜も落ち着いて、塹壕残るジャングルをすすむ。良く見るとジャングルの中、所々に塹壕の跡や防空壕が見当たるだろう。これからは稜線の登山道になっていく。視界が開けると、島全体、広い輝く海が見えるだろう。ゆっくり休んで、お弁当を食べて、、、メグロに水をあげてみたり、、眺めの良い”お弁当広場”辺りで昼寝をして、、、時気が合えばクジラの潮吹きを探してみるのも楽しい。ただし 日なたでゆっくりしすぎると 真っ黒けに日焼けしてしまうから大変だ。天気も変わるかも知れないから、注意が必要。稜線では風が強い時もある。
しかるに僕の下山路は、反時計回りになっている。
山頂では”あること”をしなくてはならない。
そして 眺めは見飽きてくるころかも知れない。
立派な展望デッキのある山頂からは、南崎の方角、こっちは南東くらいの位置になるのかな。
南崎のむこうに姉島、妹島、平島、向島、、、っと母島列島の島が眺められる。北には石門山。
その右側には父島がかすかに見えるだろう。東に目を向ければ、霞むマーカス。そしてボンヤリとハワイが見える。飛行機がひっきりなしに離着陸をしている。なぁんてのは見えるはずはない。ま、だいたいそういう位置関係だ。
前浜にある指示標識が乳房山の山頂にも有ったら、もっと解りやすいのになぁと思うのである。山頂を後にすると暫く行けば パイナップル畑の跡地を過ぎ、ぐんぐんと木階段を下っていく。その昔は小笠原のパイナップルは有名だった。とっても甘いらしい。今では台湾やフィリピンからのものが大量に入ってきてしまい、しかも安い。小笠原からだと輸送費がかさむから とても太刀打ちできず、今はたぶんパイナップルを作っている農家はいない。食べてみたいなぁ。。注意してみてみると あっちこっちに防空壕の跡地が見当たるに違いない。こんな場所にまでそういった塹壕が残っているのにはびっくりさせられる。
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●山岳ガイド 木村道成オフィシャルページ
素晴らしい山々や人々との出逢いを大切に安全第一をモットーにガイドをしています。大自然から戴けるエネルギーや感動を皆様と分ち合えたらと思っています。
日本山岳ガイド協会認定上級登攀ガイド 木村道成
上高地に程近い、長野県波田町在住。ガッツあり、日本中を飛び回っています。非常に前向きであり信頼でき、それでいてとても楽しい方です。サイトは写真もとても美しい。一度見てみてください。メロンパンが大好物です。
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