CDRでのプレス・マスター
最近になって、CDのプレス工場でのマスターの受け入れの状況が変わってきている。以前はと言うと、古くから使われていたUマチックテープ、いわゆる3/4(シブサン)での納品が多かった。しかし、今ではUマチックでの受け入れをしてくれないような工場も出てきている。
そこで 代りに使われているのはCDR。
日本以外でのCDのプレス工場では、数年前からCDRでの受け入れが多く、アメリカでは ほとんどがCDRという状況もあった。まぁ、Uマチックテープレコーダーの耐用年数の問題もあり、徐々にそうなっていく傾向にあるだろう。日本のメジャーなプレス工場も、CDRでの受付という所が多くなってきた。いや、CDRでしか受けてくれないメーカーが増えてきたので みんなが意識するようになってきたのである。
折角Uマチックで納品しても、一旦CDRに焼き直しされてからプレスに入るような事も 普通に行なわれている。これでは なんの為にUマチックを使っているのか解らない。
そして、マスタリングの現場で、僕に質問してくるクライアントも増えてきている。皆一様に”どうしたら良いのか?””大丈夫なのかな?”という不安感があるようである。ここに 少しこのことについて書いておこうと思う。
CDRでのマスターのメリットは、
小さいので持ち運びが楽で 保管が容易であること。
そのまま 一般のCDプレーヤーで再生できること。
複製が作りやすく、複数の工場に送る場合便利であること。
安価であること。
このようなことになるであろう。
プレス工場での受け入れが こういった身近なメディアに成るということは、ある意味歓迎するべきものなのかも知れない。
逆に 小さいので扱いが雑になる。紛失する危険がある。そのままCDプレーヤーで聞くことが出来るので、”マスター”としての扱いがラフになる。認識の低いクライアントだと、マスタリング作業後の帰宅途中にカーステで聞いてみるということも 充分にありうるのである。
また、複製が作りやすく安価なことは、創作物としての品格の高さのようなものを無視して、安易な取り扱いをしてしまう可能性がある。
むやみにコピーをしてしまったりという 著作物の権利をある意味無視した様な行為も、簡単に行える。
とにかく CDRでのマスター納品のスタイルが、徐々に大半を占めるようになってきている。これは 事実である。コストも安くなるので ある意味有難いことである。マスタリングに携わる者として、いくつか注意点を挙げておこう。
あくまでもマスターという認識を持つ。普通のCDプレーヤーで聞くことが出来るしコピーすることも出来るが、工場に納品するマスターでは 再生もコピーもしない。このプレス・マスターCDRに何かあったら、安価なCDRが無くなるというより、数百万〜の制作費が あっという間に無くなるという認識を持つ必要がある。
CDRは、書込されているデーターの領域がむき出しになっている。いままで音楽業界で使われていたマスターというものは おおむね内部にデーターの書込領域があるため、簡単にデーター領域に触れることは不可能であった。専用のプレーヤーなりにセットするか、ケースを開けたり、引っ張り出したりしないかぎり不可能なのである。CDRの場合はこの部分がむき出しになっているので、注意しないと触ってしまう可能性がある。指紋を付けたり傷を付けたりということは、エラーが激増してしまい製品に大きく影響してくる。致命的な場合にはノイズが入る、音が出ないということもありうる。
CDRには 一切マジック等で記入しない。通常記入している面は 薄膜が蒸着されている面である。表面は保護膜に覆われているが、マジックなどでは、インクの成分が浸透していくことがあり、エラーを起こす。どうしても記入したい場合には、センターの小さな透明な部分、ここに小さな文字で メモ程度に記入し、詳しくはデーターシートなどを添付するようにする。
CDR盤面には シールやテプラの様なものは一切張り付けないこと。盤面の重量バランスが変わってしまい、正確な回転が出来なくなる。すると当然エラーが増える。目印だけをセンターに記入する。接着剤がデーター面に付着すれば、当然事故につながる。
同じCDRメディアなら、プリンタブルタイプでない物を使う。プリンタブルのタイプは 保護膜の上にプリンタブル層を一層加えたものであるが、インクが染み込みやすくするためにプリンタブル層は 水分を吸収しやすいようになっている。つまり 湿気の影響を受けやすい。
CDRは 微妙な埃などでも 圧倒的にエラーが増えてしまう。
取り扱いはクリーンな場所で行う。もし埃が付いてしまった場合は、エアースプレーで吹き飛ばす。間違っても口で息を吹きかけて 埃を吹き飛ばそうとしてはいけない。唾液が着いて、事態は益々悪くなる。煙草の煙、蒸気、油はねなどもエラーに影響する。
保管は温度、湿気に注意する。例えば そういった場所にきちんと保管していたとしても、永久に保存できるものではない。
CDRの場合、少しの傷や温度変化、湿気により蒸着膜がゆがんだり、空気が入ってしまうと、いとも簡単にパラパラと薄膜が取れてしまうことがある。当然、盤自体が曲がってしまったら データーは復元できない。
工場での取り扱いにも問題がある。東南アジア系のプレス工場で、マスターCDRの扱いが悪く 盤面に傷を付けられてしまって、そのままプレスされてしまったという事例もある。信頼できる工場にプレスをオーダーする事を奨める。
まとまりなく書いてしまったが、だいたいお解りいただけただろうか?
たまに マスタリングに持ち込むマスターをCDRに書き込んでくるアーチストもいるが、この時にも全く同じことがいえる。
最後に気になる音である。これは Uマチックマスターの時にでも同じであったが、確実にこうなるということは言いにくい。しかし CDRでのマスターの納品の場合、完成してきた製品は経験上 Uマチックの場合に比べて甘くなる様な気がする。また 音の変化が大きい。これは 僕の感覚的なものなので、違ったように感じる方もいると思うし、工場などの状況によっても変わってしまうと思う。
まだまだ 圧倒的にデーターが少ないので、また何か気が付いたときには 記そうと思う。
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●グループ山想
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