正統派のとんかつの食い方
サイデラ・マスタリングでの作業の場合には、僕は良くとんかつを食う。
それも結構近くにある まい泉本店のお陰である。元来僕はとんかつが好きなようで、結構よく食べるのであるが、ここのとんかつは美味しいので食べない手はない。
まい泉は サイデラからだと解りづらい小さな路地を行くのが近道である。これは いわゆる”裏原宿”というのか? 悲惨なほど複雑になっている。この中を10分くらい歩いていくと到着する。
ランチタイムは18時までなので いつでも食べに行けそうだが、これがなかなか行けないのである。まずは一般的なお昼時は さすがに混んでいる。混んでいるから待たされる。仕事があるときはそんなに待ってまで とんかつは食えない。従ってお店が空きだす14時半から15時位から ランチタイムの終わる18時までが狙い目となるのだが、この時間はというと そう、大抵はスタジオに入ってまさに仕事をしている時間帯なので とんかつなどは食っている場合ではない。だから なかなか食べに行けないというのが 実態である。
今日は どういうわけか?時間が空いたので、思い付いたように久しぶりでまい泉に行ってみた。
一人で行くと大体カウンターに座ることになる。
メニューにはメンチカツ定食があるのだが、いつも売りきれていて食べたことが無い。一度食べてみたいのだが、値段も安く たぶん早い時間に無くなってしまうのだろう。残念だ。
ヒレとかロースとかのとんかつもあるのだが、まぁ値段もリーズナブルなので今日はスタンダードなとんかつ定食を頼むことにしよう。861円である。
ごはんとキャベツはお替りが自由にできるから、遅いランチタイムで腹ぺこであっても充分に満足できるだろう。これは 本当にうれしい。
オーダーを済ますと 大根おろしの椀が出てくる。”つきだし”という感じ。少々カツオブシののった椀は、脂っこいとんかつを食す前に、胃腸に負担を掛けないための配慮なのかな?暇つぶしには具合が良い。少しばかり醤油をかけて、ぼっちらぼっちらと つついているのもいいし、そのままメインのとんかつが出てくるまでとっておいて、とんかつと一緒に食べるのもいい。ぼぉ〜っと店内を見渡すと、客に対しての配慮に満ちた店員のきびきびした動きが、小気味よい。さすが由緒正しい老舗という感じがする。僕のような値段の安いとんかつ定食も、ちょっと値の張るオーダーをした客も、何区別なく応対して居る様は どこにも無理が無く、自然に見える。やはりそこは人間のすること。どこかに差別するような雰囲気が出てしまうものだろうが、そんな事はみじんもない。僕らの仕事も”予算”が多い、少ない。面白い、面白くない、、、でいろいろあるが、実際にする作業はほとんど同じような感じである。そんなに大差はない。それでも予算の無い仕事には、どこか横柄な態度で当ってしまっていたり、、そんな事があるような気がする自分には良い勉強になるように感じる。改めて いかんなぁ〜こんなことじゃ!と、自分に言い聞かせているようだ。
さてさて 結構待たされて、お待ち兼ねのとんかつ定食が出てきた。
僕は勝手に、正統派のとんかつの食い方を決めている。さすがに とんかつ好きなので、この辺りはこだわる。
まずは、出された盆をとりあえず見る。いつも同じなのだが、出されたものはとにかく目で楽しもう。匂いも重要なファクターだ。一呼吸して、”これから食うぞ!”という士気を高める。ちょっと待たされて腹ぺこ度も増しているので、いい感じだ。
さてさて次は、目の前に置かれている辛口の方のソースをかける。甘口の方はどろっとしたソースで、辛口はさらっとしている。どちらをかけるかはそれぞれの趣向によるが、僕の場合は いつも辛口である。
ちいさなひしゃくで まずはキャベツに、、一杯。 まんべんなく行き渡るように とろぉ〜りという風にかけていく。
次の一杯はメインのとんかつへ。
そしてもう一杯、これもとんかつにかけるのだが、一杯分全部かけてしまうとちょっと味が濃いので ちょっとだけ残すくらいにかけるのがポイントである。この加減は、たぶん体調による。ソースのかけすぎは、せっかくのとんかつを台無しにしてしまうので気を使わなくてはいけない。
次ぎにやはり目の前にある 練りからしを、すっごく小さいサジで2杯。皿の端に塗り付ける。ようし、準備は出来た。
いよいよ箸をとる。
当然 割り箸である。
僕は 割り箸を割るのがへたくそで、いつもどっちかが広くなって割れる。上手くいったときは”おお!うまくいった!珍しい事もあるもんだ。今日はなんかいい日かな?”と思うのだが、大抵は”またか?どうしてだろう?”と思う。
箸を割ったら、次はみそ汁の椀の蓋をとり、中を適当にかき混ぜながら 中身を確認する。今日はしじみのみそ汁だ。しじみは身を食べるかどうか?ちょっと悩むところである。僕はしじみが好きなので 身まで食べたいのだが、あまりにも身の部分が小さすぎるので、なんだかセコイ感じがして食べるのを少々”恥ずかしいかな?”と思うことがある。それに あまりにチマチマしていて 食べるのは面倒でもある。皆はどうしているのだろうか?
しじみは実は、糖尿病には良いらしい。ということは、本当は身まで食べてしまったほうが身体には良いということなのだろう。
とりあえずみそ汁を一口、口に入れる。
美味い。
みそ汁は、なんだか幸せな感じがして 好きだ。
さて、やっととんかつに箸を出そう。
既に包丁で5〜6コに切り分けられているので、自分で切る必要はない。右から二番目の一切れを箸でとり、練りからしのあたりをちょいと滑らせてから口に入れる。まい泉のとんかつは、とっても柔らかく口に中に幸せが広がっていく。
ううむ、美味い。
何故二番目かというと、ちゃんと理由がある。
普通に考えれば 右のはじっこから食べるような気がするが、はじっこははじっこが故に、”衣”の部分が多く、脂っこい。そして少々固くなっていて、本来の一番美味しいとんかつとは違うような気がするのである。だから二番目なのである。僕は最初にまずおいしいとんかつを食べたい。別に真ん中でもよいかも知れないのだが、なんか二番目が好きだな。一番おいしい様な気がするのである。
とにかく 一口味わったとんかつの素晴らしい風味が口の中から消えてしまう前に、ご飯を口に入れる。ぺこぺこになっているので、ご飯も美味い。
やっとおとづれた ひととき。
ここまで、とんかつ定食が僕の目の前に登場してからここまでは、段取りは複雑だが 結構早いテンポで時間が流れる。なにしろ お腹はぺこぺこだから。
それから 次のご飯が口に運ばれる前に、今度はキャベツを食べてみる。僕は とんかつに負けず劣らず、キャベツが好きで、”野菜の王様”は キャベツだと信じている。残った二番目の一切れを口に放り込むと、ご飯も一気に加速度を増して、口の中に放り込まれていく。
次ぎに一番右の一切れを食べてしまおう。
脂っこいから、まだご飯で食欲が満たされてしまわないうちに食べてしまわなくてはいけない。そして、残りのご飯を食欲の勢いに任せて口に運ぶ。残しておいた大根おろしも 脂っこいと感じればすぐスタンバイできる。もう一切れに箸が伸びるかどうか?というタイミングで、すでにご飯が無くなる。店員さんに すかさずご飯をおかわりする。愛想よい店員さんは、”普通でいいですか?”といいながら 優しく僕の茶わんを受け取って、おかわりを盛りにいく。
おかわりを受け取るまでは ちょっと手持ちぶさたで、仕方がないからおしんこをつついてみたり、キャベツをつついてみたりして間をつぶす。
さて、おかわりのご飯がきてからが、実は難しい。
ここまで空腹に任せて一気に食べてしまうと、この後はちょっと”多かったかな?”とか、とんかつの持つ脂っこさがくどく感じたりする。しかしだな、こんな美味いとんかつを そう感じながら食べるということは罪悪であり、申し訳が無い。単純に食べ方が悪いだけなのである。そうならないように食べるのが、とんかつ定食の正統派の食べ方なのだ。
ここでお茶に手がいってしまうのはまずい。
変に満腹感が増してしまう可能性がある。
まずはキャベツ。この辺りで口直しをするか、ちょこっとおしんこで口直しをした感じが良い。ただ、おしんこは結構重要なアイテムなので、出来ればフィナーレ近くににとっておきたい所だ。
残りのとんかつ達とご飯を食べ尽くす。ちょっと脂っこく感じたりしたら、ここでおしんこの出番だ。必要ならキャベツもお替わりできるし、至れり尽くせりである。とにかく 最後までとんかつは 美味しく食べなくては正統派とは言えない。そんなことではとんかつに申し訳が立たない。
ここで、ご飯が終わる前に、最後の余韻を楽しむために とんかつをほんの一口残しておくのがポイントである。最後のご飯を口に入れた後に、この一口のとんかつは ちょっとだけ残ったキャベツや 練りからしも綺麗に、皿を拭き取るようにして御一緒してくれる。これで 美味しいとんかつの余韻は、バッチリである。
最後に残ったみそ汁を飲み干す。
今日はしじみだなら、まずは身の部分をたべてしまうと、綺麗に汁を飲み干す。
ああ、美味かった。
充分満足が行ったら、最後にお茶を飲み干そう。
おしんこが残っていれば、ここでお茶請けになっていただくのも 幸せだ。
今日はいい昼食ができた。
こうして、僕のランチタイムは終わった。
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●ディーアンドエーミュージック
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