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□電話回線のフォーマットの違いについて
通常我々の生活に於ては、電話回線のフォーマットの違いなど意識する事は 全くと言って良いほどない。しかし、今回の実験の様に ディジタル回線の伝送枠を限界に近く使い込んでいくと、そこには様々な問題が発生する事となった。
これらの問題点や違いを理解し 事前に準備しないと、今回の様な伝送実験は不可能に近い。
まず一番違うのは、電話回線システムの違いである。日本とは違い、アメリカにおいては15社もの電話会社が存在し、互いにサービスエリアや回線が異なる。長距離回線専用の会社、ローカルの回線専用の会社と様々である。それぞれの電話会社が(通常の利用では問題はないが、、、)多少なりとも異なった回線フォーマットを使用しているようである。今回のようにディジタル回線を利用しようとする場合、どうやら この複数の回線を渡り歩く間の 一番”弱いところ”に システム全体が左右されてしまう。
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電話通信回線は、各国(各地域)が独自に発展 進歩してきた。そのためそれぞれが独自の形態を取っているのである。今ではIフォーマットという国際規格が決まっているが、端末の運用に関しては各国の状態に合わせて独自の異なった発展形態をとる または、経過的な処置として第三のフォーマットをとる事を認めている。
例えば、日本においてはISDNといえば64KBIT/SECが普通であるのに対し、アメリカにおいては56KBIT/SECが中心であるため、システム全体としては56KBIT/SECでの伝送となる。実際には、国際電話回線として伝送される時に、T1,T2,T3(日本では、一次群と呼ばれていたりする)などのより高密度のフォーマットに自動的に変換されている。長距離回線の場合も同様である。電話交換機も全てが最新テクノロジーに対応している訳ではなく 運が悪ければ とてもひどい状態になりうる。まあ 大抵は”弱いところ”を残したまま何とかうまくいってしまうが、、、その事は 我々は普段全く気に掛けていないし 知る必要もない。また、詳しくは調査不可能であり選択すら出来ない。”弱いところ”というのはこのようなことである。
今回の実験にあたっては、御協力頂いた各通信会社が、それぞれ御尽力頂いて回線の問題は解消したが、この様なレコーディングスタイルが簡単に確実に行なえるようになる為には回線の問題を解消する事は避けては通れないであろう。
Iフォーマットが全世界的に広まり、早く 全ての電話回線が円滑に接続可能になるように願うだけである。
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□コーデックの違いについて
今回利用したコーデックは 昨年から利用している APT DSM100という物である。非常に面倒なことに これと同じタイプのコーデックはアメリカにはない。IDB コミュニケーションがAPTの機材を扱っているが、多少モディファイされているようである。アメリカ用IDBスペシャルとでも言おうか。これは通信回線事情の違いによるものらしい。
日本に於てはISDNは2B(64KBIT/SEC X 2)回線プラス1D(16KBIT/SEC)回線がセットになっている。このセット一つに対して電話番号が一つついているのが普通である。D(16KBIT/SEC)回線はパケット様に付加されている。つまりおまけの様な物である。DSM100にて6B使用時には電話番号は三つになる。
アメリカに於ては様々なフォーマットが使われているが、代表的ISDNは1B(56KBIT/SEC)回線プラス 8KBIT/SEC 回線(?)が使われている。D回線はない。1B毎に電話番号が一つついていて、DSM100にて6B使用時には電話番号は六つになる。回線をつなぐ時には かなり面倒臭い。しかし 電話番号をあらかじめ登録してしまい ボタン一つで全回線をつないでしまうDTAが作られており この辺がアメリカ的発想であろう。DSM100にて6B使用時には 日本国内に比べて伝送速度が遅いため周波数帯域が狭くなる。同じISDNを使っているのに非常に損をしたように感じるだろう。ところが、アメリカでのISDN56は、元々64KBIT/SECの回線を56+8に分けて使用している様で 通常8KBIT/SEC の方をパッケットに充てているようである。これらのパッケット領域を6回線分まとめると 48KBIT/SECになり IDBでは これをタイムコードなどの付加的伝送トラックに利用している。今回の実験の様にタイムコードの伝送に1チャンネル取られなくて良いわけである。
では日本に於てはどうなるのだろうか。日本のISDNもDチャンネルというパケット回線を持っている。これを利用すると同様の伝送が行なえるのではないかと思う。実際、APTコーデックはタイムコード伝送が可能なタイプもあり 昨年のプロジェクトでテストしてみたが、本回線のBチャンネルとのシンクに問題がありレコディングには使えない。BチャンネルとDチャンネルのネットワークディレイが違うのである。単にコーデックの問題なのか、交換機の問題なのか、回線自体が持つ問題なのか、原因は不明。
IDBのエンジニアによると、アメリカに於ては Bチャンネルを分けて利用している様なものなので、ネットワークディレイは当然同じになるらしい。
どちらにしても、それぞれのフォーマットが互換性をもたないと”弱いところ”に縛られて、宝の持腐れになってしまう可能性がある。
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□キャピトル・スタジオでのセッティング
今回の実験は、公開実験を前提としているため、なるべくミスの起こらない実験内容を検討し 選択した。そのため イベントとしての時間枠では 伝送されたステレオ・ミックスをモニターとして サックスのリアルタイム・オーバーダビングのみを 行なう事とした。
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また、付加的実験として、リハーサルとしての時間枠に於て、青葉台スタジオ、スタジオジャイブで行なわれたリハーサル時のそれぞれのマルチ・チャンネルを幕張のイベント会場を経由してキャピトル・スタジオの アナログ・マルチレコーダーに取り込み、イベントに並行して 通常の方法でダビング作業を独自に行ない、キャピトル・スタジオ独自のミックスを完成させた。
このミックスは、イベントの最後に プレイバックされた。
実験当日の キャピトル・スタジオでのセッティングは 以下のような比較的シンプルな形であった。
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□キャピトル・スタジオでのセッション
当日は、16:00にハリウッドにある キャピトルレコードのAスタジオに入りセッティングを始める。メンバーは中井氏、柳井氏、ロビン、と私。
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厳しいセキュリティーチェックにアメリカを感じる。Aスタジオに向かうスロープの横には、フランクシナトラをはじめ怱々たるアーティストの写真が飾られている。
現地のスタッフと合流してセッティングを開始する。コーデックのセッティングはIDBによりあらかじめ完了していた。音声回線のセット、アナログマルチレコーダーの調整を行なう。
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キャピトルスタジオに於けるセッティングは 予想外にスムーズに進み、昨年の実験や事前のプランニングが役に立っていることまざまざと知ることとなった。また非常に助かったのはキャピタルスタジオのコンソールが 私のスタジオと同じタイプのものであったため、使い勝手が良かった。それにも増して、アメリカではこの様なレコーディングが数々行なわれており、各スタッフが こういったレコーディングに慣れていると言うことが言える。(キャピトルスタジオは、このような電話回線を利用したレコーディングスタジオとしてアメリカ国内でも有名である)また、IDBやキャピトルのエンジニアが日本のレベルからは考えられないほどハイレベルである。われわれのしなくてはいけないことが、スムーズに理解されていった。キャピトルスタジオに至っては伝送によるレコーディングで既に数々の実績があり、フランクシナトラのレコーディングなども伝送技術を利用して行なっている。また、TELEPHONE ROOMなる 専用の電話用の部屋が用意されていたのもセッティングや対応の早さの所以であろう。日本における 伝送技術の遅れを感じてしまう。
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17:30より 予定どうり進行していく。最初にネットワークディレイを計測。6Fl 36/100であった。続いて、ヘッドルームをそろえるため、1K TONEによるレベル合わせを行なう。当日のヘッドルームは18dBとすることに あらかじめ決めておいたが、レベルは予想外に低く、キャピトルスタジオでは、アナログマルチレコーダーを使用したため、ヘッドルームを揃えてしまうと、ヒスノイズが大きすぎてしまい結局各トラックごとにレベル合わせを行ないながらの伝送となった。
また、幕張がわでのタイムコードチェイスが予定どうりの方式で行なえなかった為、キャピトルスタジオでレコーダーを止めても、幕張のレコーダーが止らないという事態になってしまった。最初、キャピトルスタジオに於て タイムコードのリジェネを行なっているのだろうと考えていたが、どうも原因は 幕張にあったらしい。
青葉台スタジオとスタジオジャイブでのリハーサル時の各トラックを一旦、幕張のイベント会場に伝送し、これらの各トラックを順次 幕張よりキャピトルに伝送した。
伝送は以下の順に行なわれた。
DRUMS(STEREO),マルチレコーダーの 3、4チャンネルに録音
BASS+E.GUITER,マルチレコーダーの 5、6チャンネルに録音
PIANO(STEREO),マルチレコーダーの 7、8チャンネルに録音
ACORSTIC GUITER+VOCAL,マルチレコーダーの 9、15チャンネルに録音(18:35)
SYNTHESYZER(SEQUENCER),マルチレコーダーの 11、12チャンネルに録音
SYNTHESYZER(MANUAL PLAY),マルチレコーダーの 13、14チャンネルに録音 (18:45)
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