1995年09月15日-17日
       北アルプス 西穂岳から奥穂岳-穂高ジャンダルム 北面リッジ



    超大型で非常に強い台風12号が、せっかくの3連休にやってきてしまった。
    なんだか やたらと装飾語がハデな台風で、それも其のはず どうやら戦後最大の規模となる台風らしい。
    今僕は我が家に戻っていて、テレビなる文明的なモノを物を見ながら この文章を書いている。ストーブなんて物を焚いて とっても快適なのである。
    たった今、東名高速が不通になった。JRは今朝から50%程度で運行されているが、止っている所もある様だ。
    飛行機は既に大体止っている。要するに日本中は台風フィーバー状態なのである。
    呑気に珈琲などをすすりながら、つくづく昨日下山してきて助かったと思った。3000メートルを越える山の上に居たら、さぞ寒かった事だろう。風はスゴいだろうし、雨は横殴り。
    9/15 5:30 上高地着。残念ながら、天気は雨。
    それもジトジト降り続くタイプのしぶとい雨の様だ。空も重く、要するに余り気乗りのしない天気である。かなりの人々が、バスから吐きだされて 狭い屋根の付いている場所を奪いあうように捜し、ウロウロしている。みんな ターミナルに着いたはいいが、”どうしよう状態”である。
    全くを持って 見上げた根性というか、単なるバカというか、、、、この雨の中、早くも出発して行く人もいる。
    私達はと言うと、郵便局の前から小梨平の洗い場の中に移動して、雨をしのぎながら寝る。
    しばらくすると、雨が止んできた。ヤバイ!! やられたかなぁ。
    まぁ仕方がないので、9:00 ボチボチ遅い出発。取敢ず西穂迄でも行ってみようとなった。

    歩き始めてしばらくは雨が落ちていたが、そのうち雨も止み、雲の切れ目が出始めた。
    9:40/9:50 川の所から離れる辺りで一本とる。だんだん お天頭様が顔を見せてきた。雲の切れ目の青空が、さすがに高い。秋だなぁ。少し登ると、沢をいくつか渡る。雨の後なので、水が多い。確か去年来た時は 水は無かったのだが、、しかし、久しぶりに重荷を担いでの登りはキツイ。でもまぁ、気持イイ汗が出てくる。
    これも又、久しぶりの感覚である。縦走小僧だった頃を思いだすが、足腰がボケてしまっていて、思う様に動いてくれない。
    しかし、たまにはイイモンである。この後、道は尾根に上がり、最後の水場を過ぎた所で一本。有川君は、日ごろの”ツケ”が回ってきたのか、ずいぶんと後ろに居るようだ。
    10:40/11:15ここから急登を越し、迷い沢なんていう所を過ぎて 道は徐々にグチャグチャになっていく。キヌガサ池の下辺りの平地を過ぎ、最後の急登をこなせば 西穂の小屋の前に出た。
    12:00 この頃には、もう既に快晴状態になっている。濡れてしまったカッパやらシャツやらを広げる。あったかい。いわゆる秋の雲が早足で過ぎていく。
    辺りには、意外な晴天に恵まれて喜ぶ登山者がいる。ラーメン(700円)を食べて、ゆっくりする。つかれた。
    13:00 西穂に向けて出発。ゴロゴロした岩の道を、面倒臭いと思ながら進む。歩きづらいうえに 重い荷物で思う様には進めない。
    ほとんどの人は西穂山荘に荷物を置いての往復なので、われわれの様な巨大な荷物を担いでいることはなく、”ぎょ!”っとした事が伝わってくる。そして我々のために道を空けてくれたりもするのである。

    こらこら、、、見せモンじゃないぞ!
    14:00 西穂独標着。ここまでは さすがに人が多い。割と広い山頂で、記念撮影をする人々がいる。この辺までは、ギャルの姿が見えて、ほんの少しだけ眼を楽しませる???

    14:10意外と急な下りから、ますます荒々しさを増してくる。人もぐっと少なくなり、ここから先は”山屋”の世界であることを実感できるのである。すぐ近くかと思われた西穂頂上も、意外と遠い。どうやらさっき見ていたピークは、2つ位手前のモノだったらしい。

    15:25 いくつかのピークを越えて西穂山頂到着。狭い山頂で、行く先の山々がきれいに望める。

    人影は全くなくなり、静かな山、”穂高”が広がる。素晴らしい山なのである。山頂からここをちょっと下ったブッシュの所にはテントが張れる。
    15:45 もうすこし稼ごうと、稜線を出発。ゆっくりと山の中でも一番楽しい、稜線の闊歩をするのである。

    16:20 丁度 西穂からは二つ目のピークにある 快適なテン場に到着。稜線には過去の山屋が使いこしらえたテン場とおぼしき箇所が次々出現する。きっとここでは今までに、とっても楽しい思い出が作られてきたに違いない。
    今宵の宿は、山のてっぺんに石がきれいに並べられた快適な所である。今まで来た方々に感謝しつつ、今日はここまでとしてビールをプシュ!。お山の大将とは良く言ったもので、てっぺんのビールの味は すこぶる良い。上高地のホテルにむかって しょんべんくらえ!!と気分も最高である。どんな高精度望遠鏡を使ったとしても、彼等からは私の”粗末なモノ”は、当然 確認不可能であろう。
    夜には頂上から眺める、満点の☆。なんと美しい。有川とじゃなければ もっともっとロマンチックだったのだろう。しかし凄い!、美しい。
    そしてたわけた事に、今回は液晶テレビを持ってきた。山頂でアニメでも見よう!なぁ〜んていうのでもないが、どの程度使用に耐えるものなのか?一遍使って見ようとおもったのである。そして今回は、これがまた大活躍することに成ったのである。どうやらテレビによると、台風がやってくるらしい。ニュースがそう告げる。聞くだけならラジオで充分であるのだが、ニュース番組での高層天気図が見られるのは、とっても有難く便利である。おかげで翌日の行動をギリギリの線で予定することが出来た。まさにテレビ様々なのである。
    しかし、、、電池はすぐ無くなってしまったが、、、、2時間ぐらいかなぁ、、、、、空は澄みきった満天の星である。しかしどうやら、、そうとは思えないのだが、、、台風がものすごい勢いで、近づいて来ているようだ。
    6:00 起床 天気は雨。昨晩とはうって変わって、ガスっていて何も見えない。やっぱり台風がやってきているのである。テレビじゃぁあんまり嘘は伝えてこないだろう。そして今晩は間違いなく暴風雨になるということは、昨日見た高層天気図から明らかなのである。
    ”今日いっぱいは、めっちゃんコ暴風雨という風にはならないだろう。”
    8:00 戻るのもナンなので、奥穂に向けて出発することにする。折角来たのだし、今日いっぱいは天気は”動けないほど”にはならない。最悪、天狗のコルから岳沢に逃げられるし、運よく瞬間的に晴れ間が出てくれれば、ジャンダルムの登攀も出きるかも知れない。。。まぁ、そんなに奇跡的な妄想はたぶん実現不可能であるが、、、
    登山道は何回か、デリケートなガレの上り下りやリッジの通過がある。雨に濡れていて悪いので、なかなかスリルがある。
    西穂-奥穂の縦走といえばやっぱり冬が多いかも知れない。冬になれば西風が強く、この辺り、、、いや稜線全体を通してかなりつらい所だろう。
    われわれはと言うと、雨の中、スリップに気を付けて居るが、何とも静かな山域を味わっている。こんな悪条件の中、人はいないし、この場所はすこぶる楽しい。
    あの大人気の穂高の、そしてこんな近くに、こんなにも静かな素晴らしい場所が在るのが無条件にうれしい。途中に何個所ものテン場があるので、どこでもキャンプは可能であろう。最も冬には、その内の何個かは使えないとは思うが、、、
    8:45 天狗岳山頂到着。閑散とした頂上である。
    山頂にはテン場が2-3張りはとれる。いよいよ風もかなり強くなってきた。
    9:00 下降路はなかなか急に下っていく。道はかなり荒れていて、天候が悪いときは、間違えやすいだろう。ボロボロの赤茶けた岩が、遠巻きに見える。

    9:30 鎖場を下ると天狗のコル到着。ここには昔小屋があったが、今は壁の一部が残るだけだった。どうやら落石でやられたようだ。滑り台のようなツルツルした大岩がすぐ上にある。小屋の跡はビバーグサイトとしては雪崩や落石の危険があるので、避けたほうが良いかもしれない。むしろもう少し奥穂側に登った所の方が良いだろう。ここから岳沢側に下りる道が在るが、これもかなりマニアックそうである。雨は降っているが、今回は奥穂山頂を目指すことにしよう。
    9:50 一本取る。風が強い。崖っぷちだが、良いテン場になっている。
    天狗のコルから20分くらい 登り切った辺りだ。

    10:00 気を取り直して、出発。

    10:30 ジャンダルム手前に、これまた快適なテン場がある。ここまで来れれば上出来なんだろう。良く使われている、平らなテン場である。ここからは一旦ジャンダルムの左側に飛び出て進み、そこからグイーーーーッと直上する。II級程度の岩場だが、濡れていて良くない。
    気が付くと、さっきまで居た場所のほんの10メートル位上に居る。何だ!!はしごでも付けてくれればいいのに、、、っという感じなのである。この辺りが、さすがにマニアックなのだろうか。。。

    10:40 ジャンダルムをやり過ごし一本取る。残念だが今日は、ジャンダルムの登攀は諦めることにした。それほど難しそうではないが、この雨の中では お世辞にも快適とはいかないだろう。どうせ何回もやるところでは無いから、条件のイイ時に 決めたいモンである。残念ながら、今回は お世辞にも良くはない。ガスが深く、ゴジゴジの岩肌は、あまり遠くまでは望めなかった。
    11:00 名残惜しいが出発。ロバの耳や馬の背の”難所?” 怖い所をスリップしないように通過した。ビブラムソールはすべる!と改めて認識した。スリル満点である。一応鎖はついているのだが、重荷と雨のため、すこぶる良くない。スパっと切れているから、落っこちたら まず死ねるでしょう。簡単にいうと、やっぱり怖い。

    11:30 奥穂山頂。また来てしまった!!という感じ。ここまで来ると、たくさんの人が居る。おまけにこの台風がくるという悪条件の中、登って来る人もいる。縦走者の根性には 全く感心する。

    11:45 吊り尾根を下山開始。わりと調子よく下っていく。もう、雨にも慣れた。道は感心するほど良くなった。奥穂、前穂の吊り尾根は、相変わらずデカく長い。


    12:40 前穂分岐。たくさんの人がいたので通過する。なんだか アザラシか何かの一族の様でもある。みんな斜面に散在して張り付いている。

    13:10 岳沢パノラマで一本。さっき抜かしたおばさんパーティーに抜かれると厄介なので、そそくさと出発。

    14:10 岳沢ヒュッテ。一応安全圏になった。電話を探すが、見当たらない。雨がかなり激しくなった。

    14:20 やけくそで下山。

    15:30 木道

    15:50 上高地到着。難なくタクシーがつかまり、松本まで乗せてもらう。

    お決まりの”おかめの湯”で、ひトっ風呂浴び、”どんぐり”ではスパゲティーにビール。何たる充実感。
    松本駅で時間調整して、余韻を楽しみながら、急行アルプスにて帰京


    感想:条件が悪くても、良いところは良い。
                        
         
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    日本山岳ガイド協会認定上級登攀ガイド 木村道成

    上高地に程近い、長野県波田町在住。ガッツあり、日本中を飛び回っています。非常に前向きであり信頼でき、それでいてとても楽しい方です。サイトは写真もとても美しい。一度見てみてください。メロンパンが大好物です。
                   
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