荒川出合三ルンゼ右の滑滝
平成5年2月20日快晴
前夜、同じくアーリースプリングを登る予定の三村、長島両君と共に、奈良田を経由して林道を発電所まで入り、テントを張る。中村君は風邪で調子が悪そうであったが、酒だけは一人前に飲む。
朝、例によって目覚し時計の代りをして三人を起こす。
特にこの内若干二名は、朝が来たのは私の故だ、と言う様な不機嫌な声を出してなかなか起きない。
「くそったれ、勝手にしろ」と朝食をすませ支度にかかる。
昨年の三月第一週に来ているが、この時は時期が遅く、ブライダルベールの氷が大崩壊しており、右の滑滝も途中氷が切れていて、登攀不可能、又、アーリースプリングには、全く氷が無かった。さて少し出発が遅れたようだ。狭い谷間にも陽射しが降り注ぎ、快晴である。
橋を渡って荒川左岸の林道を、締まった雪を踏みしめつつ上流にたどる。見上げると、二ルンゼの大滝が一條の白布を垂らした如く素晴らしい。
出合より足首位のラッセルを交えつつ急登し、取付き点下部にある40メートルほどの緩いナメ滝下に到る。左側はアーリースプリングとの低い分岐の尾根、中村君はこれを登って行ったが、私は真っ直ぐナメ滝を登り取付き点に出た。
間も無く三村、長島パーティーも追い付いてきた。一休み後、アーリースプリングへ向かう彼らは左奥へ、私達は雪壁を横切って左岸に出た。
左手に見えるブライダルヴェールの結氷は、若干甘そうであるが、比較的良く発達している。
天気は良いし、「さぁ、やるぞ」と気合を入れる。
まず私がリード、左斜上して5メートル位の処へ一本打つ。
氷質は乾燥していてアックスを打ち込むと「パカッ」と割れるので、二度三度と打ち込まねばならず、やや腕力を消耗する。大分登って、「ロープあと何米?」「あと二十五」の返事
「えっ、まだ大して登っていないんだ」とガッカリするが、
気を取り直して再び登り始める。
下から見たところは緩く見えたが、平均傾斜は七十度位、所々、段になっている部分は八十度位ある。ピトンを5本打ち、潅木にランニングを取ってようやくこのピッチを終わった。隣の三村パーティーは中段左手の大きなテラスに出て二ピッチ目にかかっている。アックスが殆ど一撃で決り、快適そうである。次は中村君がリード、やや右に登ってランペ状を左斜上して行く。途中雪壁状の部分を越え、左の氷柱へと登り始めたがロープいっぱいとなり、きわどい格好でビレー態勢に入った。(中間ピトン2本)、
第三ピッチ、つるべで私の番だ。
更に氷柱部分を左斜上して行く。この部分が全ルート中最も傾斜が強く八十度位か。これも7メートルくらいで終わり、最後は雪壁状の所でビレーする。(中間ピトン5本)最後のピッチは、右斜上 十五米、岩にランニングビレーを取り、一気に落ち口に抜けて終了となった。(中間ピトン1本)四ピッチ四級プラス程度のなかなか歯ごたえのある登攀であった。
さて下降路は?
とにかく左でブライダルベールの上へ出ようと目の前の小尾根をラッセルして乗越すと、上部で三村パーティーのコールが聞こえる。「どうしたんだ」と聞くと、「上に行き過ぎて下降ルートがわからない」との事。何とか下部で合流したが、ルートを間違えたらしく、急なヤブ尾根は気が抜けず、途中ラッペル三回を含めて暗くなる寸前に林道に出た。三ルンゼよりも一本下流の小沢に下りてしまう結果となった。これはブライダルベールの真上を横切って、一つ目の尾根を下るのが正しいのであろう。
いずれにせよ間違え易いので、多めに時間を見ておきたい。
翌曇りより雨になったので下山したが、トンネル内の清掃工事にぶつかり、林道入口のゲートを無断で開けて入った事を、えらく怒られた。
二月二十日 八時五十分 発
十時五分 取り付き
十五時二十五分 終了
十七時五十分 帰着
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●ディーアンドエーミュージック
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